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ALL ABOUT OUR FLAGSHIP STORE Vol.2

“余白と無駄遣い”を味わう贅沢な空間

YOKE FLAGSHIP STOREができるまで

YOKEの世界観が詰まったフラッグシップストアが出来上がるまでのストーリーをたどる対談、後編。

有川さんと寺田の対話から浮かび上がってきた「余白と無駄遣い」というストアコンセプトを、

どのように空間レイアウトに落とし込んでいったのか。

内装のディテールに秘められたエピソードにも注目です。

空間の現在進行形を見せた展示会が転機に​​​

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―――内装レイアウトは、何案くらい候補が出たんですか?

 

有川:大枠としては2案です。たたき台として第一案をまず出しました。今思えば、お互いしっくりきていなかったところもありましたね。そのあと25年春夏の展示会を控えていたので、一回様子を見ましょうと話しました。

 

寺田:展示会をあの場でやって本当によかったとつくづく思います。実際に洋服を置いて、人の流れを見ることができたのがとてもよかった。

 

有川:そうでしたね。最初は3本の柱をつなぐように通してラックをつける案だったんですよ。柱のまわりを回る動線を考えていました。

寺田:展示会では、柱を囲うようにラックを置いたんですよね。

 

有川:お客さんが柱の間を通って自由に回る様子を見たら、この動線のほうがよかった。当初の案だと、柱を中心とする内回りか外回りかの2パターンに動線が限定されていたんです。

 

これだと、寺田さんの要望だった回遊性や美術館を巡るような動きにはならないと思ったんです。展示会のこの案、いただき!って感じで修正しました。柔軟さがウリですので(笑)。

 

寺田:(笑)!展示会のために作ってもらった巨大な四角いベンチも、お客さんが自由に座ってくれてとてもよかった。

 

来場した多くの方に「今のままショップにしていいんじゃない?」と言われました。

 

有川:空間のBefore & Afterを一般の方が見られる機会ってまずないですよ。前後の差を直接わかってもらえて、いっそう楽しんでもらえるんじゃないかと思いましたね。

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​​​​―――展示会を経て、どのようにまとまっていきましたか?

有川:現場でヒントをつかめたので、そこからは早かったです。前回のプランを全て白紙にした第二案で、一気に今の形に進みました。

 

柱は単独にそれぞれ立たせることにして、柱の間をぐるぐる回る人の流れを作ろうと。そこからは迷いませんでした。

 

回遊性をもたせるときに、あえて方向がわかるデザインを消そうとも考えたんです。迷路に近いような動線を意識しました。

 

斜めの壁やアールの湾曲に加えて、什器、四角柱のミラーにも角度を色々つけることで、つながりを消せるのが良いなと。目地がない床も、方向性を消すために重要でした。

―――確かにこのお店は、試着室がどこにあるかわからなかったり、佇む場所によって見える景色が変わったり、迷路のようです。

 

有川:試着室も店舗看板も、アパレルショップに当たり前にある「リアルなもの」を隠すことで、アパレルっぽさを消しています。

 

寺田:試着室がどこにあるかわからないってよく聞かれます。ここも、改めて良いポイントだと思いました。

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​​​​壁や什器は「寺田さんの人柄を表現しました」

―――内装でこだわったところはたくさんあると思いますが、いくつか教えてください。

寺田:ディテールの話をすると、僕は有川さんのアールがついている壁がいつもお気に入りなんです。下馬も三宿も、壁が少しカーブしています。

 

有川:寺田さんのイメージを思い浮かべた時、直線よりちょっと湾曲していて。硬さより柔らかさを持ち合わせている人、という印象です。でも、柔らかいけど芯があるんですよ。そんな人柄がアールで表現できました。

 

寺田:光の反射が直線よりも立体的に見えて好きです。

 

有川:あと、美術館みたいな空間にしたいという思いも聞いていたので、壁は白で統一しました。美術館って、心地良さと緊張感を併せ持っている場所でもありますよね。

壁はアールをつけて柔らかさを出しつつも、床との設置面は金物の縁をつけて浮いているようなデザインに仕上げています。金物で少しエッジをつけることで、柔らかいだけじゃない要素も足しました。

寺田:たまらないですね。

 

有川:ギャラリーや美術館でよく使われるディテールなんですよ。

 

あともう一つ、寺田さんを表現したのは洋服をディスプレーする什器です。僕のイメージで寺田さんは「石」なんです。

寺田:僕、石だったんですか(笑)。

 

有川:先ほどお話ししたとおり、寺田さんは柔らかいけど芯が強い。これを素材で表現したいと思ったんですね。

 

コンクリートや金物といった硬さがある材質ではなく、柔らかい表情だけど単体では強い素材と考えた時、淡い色の石だなと思った。

 

寺田:一つの空間にテクスチャーのバリエーションが広がるし、什器自体がオブジェとなって空間に引き立つと思って、めちゃくちゃ惹かれましたね。

 

あと、来店した人は皆この石の什器を触るんですよ。それも良いなと思っています。

 

―――白壁の境目にスチールの円柱が差し込まれているのも気になりました。

 

有川;これは、裏テーマとしてYOKEの「つなぐ」という服作りと共鳴するディテールです。

 

躯体のコンクリート壁と新規の白壁がぶつかる部分に緩衝材を入れて繋ぎをつくることでYOKEらしいディティールが足せると思いました。

 

あるとないとでトータルのバランスが全然違うんですが、別になくてもいい程度のさりげなさで取り入れています。

 

あまりコンセプチュアルにしすぎたくなくて、ちょっとした空間のアクセントくらいの立ち位置で作りました。あくまで店舗の“味”として出せたら良いなと。

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―――改装を通して、寺田さんが一番印象に残っていることはありますか?

寺田:床材が入ったときですかね。納期が遅れてハラハラしましたが、この床が敷かれたことで店舗全体のムードが一変して驚きました。

 

それまでは剥き出しの荒々しさが漂う無骨な空間でしたが、品の良い石っぽい質感のこの床になって、一気にブランドらしくなりましたね。

 

有川:床って表面積が一番大きいから、印象が大きく変わる場所なんです。この床材の樹脂モルタルは真っ白じゃなくて、よく見ると表情があるところがYOKEっぽいと思って。ギャラリーでも使っています。

 

YOKEはニュアンスが多分に含まれているブランド。一言では言い切れない深さを感じます。だから世界観も一色でまとめるのではなく、淡い色彩のグラデーションで表現したかったんです。石を一色・一種類でまとめなかったのも、その思いからでした。

​​​あまのじゃく同士がタッグを組むといっそう高め合う

―――お店をオープンして、今の率直な感想を教えてください。

 

寺田:直営店ができたことで、発信力が変わったと日々実感しています。相乗効果で、ECの売り上げも伸びています。

 

自分たちで提示していく場所ができたことが、ブランドにとって間違いなくターニングポイントになりました。

 

めちゃくちゃビビりながら改装を進めて、葛藤も常にありましたが、完成した時の感動は忘れられないですね。

 

有川:面白いお店になりましたね。

 

寺田:僕はあまのじゃくなところがあるので、周りが今までやっていない新しいことをやりたいという願望がいつもあります。

 

「無駄遣いなんてできるアパレルブランドは他にないだろう」と思って、有川さんのこのコンセプトにはかなりぐっとくるものがありました。

 

有川さんのアイデアが、僕のあまのじゃく感を上回ってくるんですよ。

 

有川:僕もあまのじゃくなんで(笑)。

 

寺田:僕は正統派じゃない服作りをずっと目指してやってきましたが、有川さんは空間作りでそれをやっている人なんだなと。

 

―――今後やってみたいことはありますか?

 

寺田:何年後になるかわからないけど、海外の店舗ですかね。アジアとかで、この空間を作ってみたいです。

 

有川:現地の素材を使ってもいいしね。でも、まったく同じ空間は作らないかも。あまのじゃくだから(笑)。ここの内装のベースをどこまで拾うのかを考えたいですね。

 

寺田:そうですね。世界中で違う空間デザインにしても面白そうです!

Text:Chikako Ichinoi

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