YOKE + ARTIST #01 / László Moholy-Nagy
このたび、「YOKE + ARTIST」と題したTシャツコレクションをスタートいたします。
YOKEの服づくりにおいて、アートはその根幹をなす要素です。このコレクションでは、毎度ひとりのアーティストに焦点を当て、デザイナー自らが選んだ作品を、YOKE定番のTシャツに落とし込んで展開していきます。

記念すべき第一弾でフィーチャーするのは、「ラースロー・モホイ=ナジ」。写真家、画家、そしてバウハウスの教育者として知られる人物です。また、「2025 Fall/Winter Collection」のインスピレーション源であるマン・レイが積極的に用いた〈フォトグラム〉の先駆者としても知られています。このTシャツコレクションでは、ラースロー・モホイ=ナジの実験的かつ未来的なビジュアルアプローチに着目し、彼の構成的作品のグラフィックをTシャツへと落とし込みました。
本記事では、激動の時代を生き、芸術と社会の接点を探求し続けたモホイ=ナジの軌跡を辿ります。

ラースロー・モホイ=ナジは、1895年にハンガリーで生まれました。幼少期に父を失い、母方の叔父の養子として育ちます。叔父が弁護士であったことから、ブダペスト大学では法律を専攻しましたが、第一次世界大戦が勃発。戦地で負傷したモホイ=ナジは、帰還後の療養中にスケッチを始めたことがきっかけで、芸術に強い関心を持つようになりました。
やがて前衛雑誌の制作に関わるようになり、構成主義的な芸術表現を志すようになります。構成主義とは、1913年にロシアで生まれた芸術運動で、「芸術は装飾や個人的表現にとどまらず、社会や産業と結びつくべきもの」と捉える思想です。モホイ=ナジはこの考えに共鳴し、以降の創作活動において、ジャンルを超えた表現を追求するようになります。

ドイツに亡命後、バウハウス創設者のヴァルター・グロピウスと出会い、1923年から同校の教授として迎えられました。建築、工芸、絵画にとどまらず、写真やタイポグラフィといった新しい分野を教育に積極的に取り入れ、視覚芸術の革新を牽引しました。1925年には、バウハウス叢書第8巻『絵画・写真・映画(Malerei, Fotografie, Film)』を刊行。自身の理念を体系的にまとめたこの一冊は、美術界に大きな衝撃を与えました。
1928年にバウハウスを離れた後はベルリンにスタジオを構えますが、ナチスの台頭によりアムステルダム、ロンドンへと拠点を移します。1939年にはアメリカに亡命し、シカゴで「ニューバウハウス」を創設。これは後に「シカゴデザイン研究所」へと発展し、現在のイリノイ工科大学に統合されるまでに至ります。

写真家としても高い評価を受けたモホイ=ナジは、フォトグラムやフォトモンタージュといった実験的な手法を駆使し、ドイツ新興写真運動の中心人物として国際的な評価を確立しました。1946年には、視覚芸術に関する重要な著作『動きのなかの視覚(Vision in Motion)』を刊行しましたが、同年11月、白血病によりこの世を去りました。


彼の芸術活動において構成主義の思想と写真表現は、不可分の関係にありました。レンズを通して幾何学的形状や斜線といった構成要素を視覚化し、それをリトグラフや木版画に再構成することで、思想と技法の融合を試みたのです。
YOKEは「つなぐ」というコンセプトのもと、過去と現在、アートとファッション、そして人と人をつなげることを目指しています。モホイ=ナジが追い求めた“未来の視覚言語”は、今なお私たちに新たな感覚を呼び起こします。
今回のコレクションでは、そうした構成主義的思想と写真表現の精神が色濃く感じられる、モホイ=ナジによるリトグラフ作品4点をピックアップしました。